開発事例

ケーススタディ01 アイデアを具現化する喜び、その原点

ケーススタディ01

昭和35年、空気で膨らますビニール製人形「ダッコちゃん」が空前のブームとなった。ダッコちゃんは当初「木のぼりウィンキー」という名称で、タカラトミーの前身である宝ビニール工業所が製造し、ツクダ屋玩具から発売された。腕に抱きつくようにぶら下げて歩く若い女性の姿をマスコミが取り上げたことでブームとなり、デパートでは常に在庫切れ、偽物も出回るほどの人気であったという。そんな折、東富士電機創業メンバーの一人である橋本は、ダッコちゃんブームに乗ってひとやま当てようと目論んでいた浅草橋の人形店の社長から「動物の足にマグネットを付けてクルマのボンネットに貼れないか」と相談を受ける。

橋本は当時まだ学生であったが、大学の専門分野で酸化鉄の知識に精通していたため、フェライト磁石による成形を思い付き、専門家の意見も聞きながら試行錯誤。強力でありながらも人形の足にピタリと収まる磁石の開発に成功した。アイデアを具現化してくれたことで人形店の社長は大喜び。商品もヒットし、続々と注文を受けることになった。

しかし量産しようにも専用のラインがあるわけでも、マネジメントの知識があるわけでもなく、人海戦術に頼らざるを得なかった。弟のクラスメートを総動員しても追いつかず、結果的に商機を逃すという苦い経験にもなった。この経験は「アイデアを具現化する喜び」と「マネジメントの重要性」を知る原体験として橋本の記憶に深く刻まれることとなった。

以来「粘り強い開発力」と「安定した生産体制の確保」という両輪は、今日の東富士電機の骨格を形作るスピリットとなっているのである。

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