開発事例

ケーススタディ03 常識も慣例もぶち破る、強い信念と製品への愛情

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1979年日産のセドリック/グロリアに日本で初めてターボチャージャーが搭載された。発売当初は国の指導もあり、燃費改善を目的として発売されたターボも、空前の経済成長の波に乗り、高出力化へと傾いていく。

ターボチャージャーは排気ガスのエネルギーでタービンを高速回転させ、圧縮した空気をエンジンに送り込むことで本来の排気量を超えるパワーを引き出す。高温の排気ガスと圧縮空気の高圧力という過酷な条件のもとで、これまでターボチャージャーに使用されているハウジングは鉄製であり、排気ガスの高温に耐えられずまた重量も重くなってしまっていた。高出力化により排気ガスの温度はどんどん高くなり、また様々な豪華装備が搭載されていく中で車両の軽量化は必須であった。

東富士電機はこの難関に挑戦。形状が複雑で鋳造難易度が高いため、製造は困難と思われていたステンレスで薄肉のターボチャージャーハウジングを生産することを成功させたのである。これにより、より高温に耐えられ且つ軽量なターボチャージャーが完成した。

しかし、ここで新たな問題が浮上する。有史以来、鋳物の値段は目方で決まるのが慣例。軽量化することでハウジングの販売価格が下がってしまい、より高価なステンレス製鋳物のコストが回収できないのだ。このままでは製品は完成したがビジネスにならない。「目方ではなく、1個いくらという価格で買っていただけないか」と交渉したが、長年の慣例を曲げることは困難を極め、購買部門をはじめ理解してくれる人はほとんどいなかった。せっかく開発した商品が日の目を見ずに終わるのか…万事休すと思われた時、たまたま縁あって顧客の経営層に直接プレゼンテーションするチャンスに恵まれた。「軽くて強い鋳物」は自分たちの事業には絶対に必要な条件であることが認められ、「1個いくら」という価格設定が可能になったのであった。

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